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助詞一つで

 助詞一つでがらりと意味が違ってくる。まことに日本語は難しい▼親【に】なると親【と】なるは同じ意味のようだが、全く異なる。子を産めば親【に】なるから犬猫でもできるが、親と言われるような親【と】なるには、本人が努力して成長しなければならない。某劇作家の文章を孫引きした▼政治家にも同じことが言えまいか。有権者の審判を受けて当選すれば、政治家【に】なるが、1票を投じた支持者に認められる政治家【と】なるには、任期中に公約した政策実現が要素の一つだろう▼県内の統一地方選後半戦は、3市長、19市町議で選挙戦となった。21日の開票結果、地域住民の多くの支持を集めた候補諸氏が政治家【に】なった▼選挙戦では、大変な苦労があったろう。一般読者が隙見できない地方選挙の内幕は、想田和弘監督作のドキュメンタリー映画『選挙』(2007年)に詳しい。無名の男性が、ある市議選で与党公認候補となったことから、中央の政争の渦に巻き込まれていく。ことに海外評価が高く、党利党略に〝緊縛〟された選挙戦が青い瞳に奇異に映ったのか▼県内後半戦の当選諸氏は政治【の】ために生きるか、政治【に】よって生きるか、二つの道がある。政治は、私たちが人間らしく暮らしていく上で大きな決断を下す権力だ。それゆえ、センセイ方には前者の矜恃を持ち続けてほしい。

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透明人間

 欲望の全てがかないそうな透明人間も、なかなか苦労が多いようだ。透明でいるため、服を着られない。消化の悪い物は食べられない。雨や雪の日は体の輪郭が現れてしまうゆえ外出禁止▼従って人目を避けて、全裸の体を震わせている。「自分の情けない境遇に、走りながら泣けて仕方なかった」。自ら開発した新薬による透明化をいたく後悔する▼そんな滑稽千万の彼だが、世界征服という野望があった。「正義の殺戮(中略)恐怖政治を打ち建てるのだ」と狂熱に浮かされて友人に語る。げに恐ろしや、権力の暴走。H・G・ウエルズのSF古典『透明人間』(岩波文庫)から引いた▼透明人間とは真逆に崇高な政治理想を掲げて、桜の季節とても目立った方々がいた。統一地方選前半戦の立候補諸氏だ。県内では県議選と千葉市議選に計195人が出馬し、計144人が当選した。選挙期間中、たすきに白手袋を付け、町中を奔走して理想に基づく公約を熱く訴えていた▼アベノミクスによる景気回復は地方ほど、波及が遅れている。閑散とした駅前、シャッター商店街、草ぼうぼうの耕作放棄地…地方は疲弊し、人口減少、自治体の財政難など、難問が山積している▼有権者は地方政治の担い手の政策を吟味し、有言実行の人物を選んだ。当選後、消息不明の透明人間に堕すようなセンセイはいない、と固く信じたい。


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