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映画「ビブリア古書堂の事件手帖」

 古書には物語がある。といっても、本の中身ではない。かつての所有者の万年筆の書き込みや赤鉛筆の傍線に人間模様を垣間見るのだ▼文化部時代は、東京・神保町の古書店街に足しげく通った。薄給ゆえ、目当ては店の奥に鎮座まします豪華装丁本ではなく、時代の風雪に耐えた廉価本。ページを繰ると、かつての持ち主の痕跡が残されている▼巻末に読了の日を記したり、押し花のしおりを挟んだりとさまざま。プロの古書店員が値付けを誤った初版サイン入り稀覯本を見つける僥倖にも恵まれた。毎年、ノーベル文学賞候補に名が上がる村上春樹さんのエッセーも随分と、ここで手に入れた▼作家・三上延さんの大ヒットシリーズ『ビブリア古書堂の事件手帖』は、同古書堂の美人店主がそんな古書にまつわる謎を解いていく探偵ミステリー。黒木華さんを主役にし、完全映画化(公開中)された▼明治の文豪・夏目漱石著『それから』の廉価本と、太宰治著『晩年』の稀覯本の2冊に絡む謎解きが、道ならぬ恋を暴き出す。映画は小説の世界観を古色豊かに再現している▼紙の出版物販売額は、13年連続マイナスと、若者の活字離れが著しい。新書が売れなければ、古書市場もしぼむ。近い将来、無味無臭の電子書籍を介して、上質のミステリーが生まれるのか。頑固な活字中毒症には全く想像がつかない未読の世界である。

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