So-net無料ブログ作成

映画「散歩する侵略者」

 映画観賞中にロケ地を特定するのが癖になっている。公開中の邦画『散歩する侵略者』の舞台が架空の地方都市という設定ゆえ、なおさら血眼になり銀幕の映像記号から正解を探した▼二つ発見できた。クライマックス・シーンは、屏風ケ浦(銚子~旭市)。高さ約50㍍の海食崖が約10㌔にわたって続く。この断崖絶壁の上に立つ者は、原始の風景に必ず足がすくむ▼もう一つは、お隣の茨城・JR土浦駅前の商店街「モール505」。空き店舗だらけの3階建て施設は廃虚感たっぷりで、映画の舞台として面白い。本筋に無関係のロケ地探索だが、これもまた映画の楽しみ方である▼『散歩-』のメガホンをとった黒沢清監督は、ホラー映画『スウィートホーム』(1988年)から注目していた。そして、映画狂の転機となった作品に『ダーティハリー』(71年)を挙げており、職業監督として娯楽を優先する作劇術に共感する▼『散歩-』は人間に寄生した宇宙人が地球侵略を画策-と凡なSFだが、武力による征服ではなく人間の概念を奪う侵略作戦に新味がある▼その概念とは家族であり、仕事である。これを喪失すると、まるで憑き物が落ちたように人は精神的に解放される。宇宙人が救世主となって、SF娯楽がキリスト教的な人間愛の芸術映画に昇華する。諧謔に満ちた演出の周到さには、驚くばかりである。

nice!(1) 
共通テーマ:blog