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映画「CODA」

 その傑人は、敬意を表して「教授」と呼ばれていた。日本が世界に誇る音楽家、坂本龍一さん(65)のことである▼中学生のとき、唐突に耳に軽快な電子音が飛び込んできた。坂本さんが1978年、細野晴臣、高橋幸宏さんと結成した「YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)」のシンセサイザー音だった。その楽曲はたちまち世界を席巻し、テクノポップという分野を確立した▼才能は映画界へも。大島渚作『戦場のメリークリスマス』、ベルトリッチ作『ラストエンペラー』では、俳優と音楽作曲家を兼務し、米アカデミー作曲賞をはじめ数々の賞を総なめにした▼記録映画『CODA』(公開中)は2012年から5年間、坂本さんの公私の実像に迫る。政治に関与した音楽の変遷史が見えてくる▼自然破壊、貧富格差、それを一因とするテロの続発。いま地球全体で、持続可能な社会が希求される。最先端テクノロジー楽器で新分野の音楽を切り開いた教授が、音の原点に回帰する。鳥の囀り、雨音、北極の氷河の下を流れる太古の水音である▼減衰しない音への憧れを込め、収録した地球の音を曲に取り込む。減衰しない音と持続可能な社会が結びつく。深遠かつ静謐なメロディー。東日本大震災の原発事故から「人類を自殺させる核」の脅威を知り、中咽頭がんと闘う傑人の永遠性へのメタファーを聞く。

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