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映画「三度目の殺人」

 刑事裁判を傍聴した方は、現実がそうドラマチックではないことをご存じだろう。主に検察側の提出証拠に基づいて、審理は淡々と進む。「異議あり!」。弁護士が大音声で反論する勇姿を残念ながらお見かけしたことがない▼動きの少ない法廷劇映画を盛り上げるのは、全て監督の演出である。検察という絶対権力に徒手空拳で闘いを挑む弁護士の構図。口角泡を飛ばす対決が真実を暴露し、世間が大好物の勧善懲悪ドラマとなる▼是枝裕和監督作『三度目の殺人』(公開中)は、新たな作劇術で裁判の限界と人の罪深さを提起する。主演の弁護士に福山雅治、強盗殺人罪の被告には役所広司を配役。利益のために平然と嘘を並び立てる〝空っぽの器〟の2人は似て非なるもの。役所の正体の知れない不気味さが、公判をかき回す▼訴訟王国アメリカでは裁判がゲーム化。もはや法廷は真実を追求する場ではなく、戦術に長けた弁護士が勝訴する。妻殺害の容疑濃厚の有名アメフト選手の無罪判決を思い出す▼選任手続きの出席率が低下している裁判員裁判において、是枝監督は悪しき傾向を危惧する。役所被告が公判で一転、殺人を否認。福山弁護士が裁判のやり直しを求めるが、判事は初耳の「訴訟経済」という市場原理を持ち出して難色を示す▼「誰を裁くかは誰が決めるのか」。台詞が監督の最大級の皮肉に聞こえた。

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