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傍若無人

 最近、「傍若無人」の4文字が頻繁に脳裏に浮かぶ。「傍らに人なきが若し」と読み、人前をはばからずに、勝手気ままに振る舞うさまをいう▼若者も1人ならばスマホ依存の無言症だが、3、4人もそろうと途端に迷惑集団に変身する。歩道で横一列になって道を譲らず、電車内では奇声を発してはしゃぐ。顔をしかめる乗客など、まったく眼中にないのだ▼座席でのうたた寝をたたき起こされて、動物園に迷い込んだかと錯覚する。まさしく彼らは烏合の衆。無神経な行為は、本来叱るべき立場の中高年層まで広がっているやに感じる▼人類行動学者・香原志勢さんが『動作』(講談社現代新書)で嘆いている。「電車内の暴力、痴漢、不行儀などは(中略)多くの場合、忍耐か愚痴を洩らす以外、よい解決法がないのが現状である」と▼1986年の出版から31年、JR東日本が山手線の全車両に防犯カメラの設置を決めた。迷惑行為や痴漢などの犯罪とテロ防止が狙いで、設置は来春から。ただ、監視と法律で規制の網をかけるほど、息苦しい社会になる▼場所を全日空機内に移す。お盆のUターンラッシュで出発が遅れ、乗客がイライラしている。その時、歌手・松山千春さんの美声が響いた。名曲『大空と大地の中で』。乗客の憤りの表情を笑顔に変えた。拍手喝采--。人間は他者への気遣いができる高等生物のはずである。

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映画「海辺の生と死」

 ひととき瞑目して、製作サイドの伝えたいことがより鮮明に耳朶を打つ映画もある。邦画『海辺の生と死』(公開中)がそうした秀作だ▼第2次世界大戦末期の奄美の小島を舞台に、国民学校の代用教員(満島ひかり)と海軍特攻艇隊の隊長(永山絢斗)の純愛物語が始まる。近頃では珍しく、上映時間が155分という長編作である▼島のゆっくりと流れる暮らしのリズムを表現するのに、2時間半を超える長尺が必要だったのだろう。映画観賞中にまぶたを閉じれば、命の搏動が鼓膜を振るわす▼潮騒、せみ時雨、島唄の織り成すハーモニーが、平和の尊さを静かに訴える。しかし、日本の戦局が不利になるにつれ、平生の音が激しい爆撃音にかき消される。敵機来襲、機銃掃射…同期の桜、自決特攻。ああ戦争はなんと残虐な音を立てるのだろう▼まぶたを開く。銀幕には出撃直前の夜の海辺に、ひしと抱き合う若い2人がいる。木の葉のような小艇で敵艦への自爆特攻を決意した男と、愛する人にすがる女。国家という巨大権力の前に、個人はいかにも無力である▼本作は戦争の追悼歌だろう。越川道夫監督は、ラジオから流れてくる玉音放送をもって映画を締めくくる。現人神の肉声が国民を戦争の呪縛から解き放つ。やがて始まる復興の、希望の槌音が聞こえてくるようだ。終戦72年目の「8月15日」に聞こえた音は――。

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KOダイナマイト引退

 希代のボクサーがグローブを吊した。日本歴代3位の11連続防衛で6年4カ月もの間、世界王座に君臨。輝かしい功績と共に、「KOダイナマイト」と呼ばれた一打必倒の闘いが記憶に残る▼前WBAスーパーフェザー級王者・内山高志(37)が引退を表明。この日を覚悟はしていたが、拓殖大の後輩で内山の背を追って世界3階級制覇を果たした八重樫東(34)が現役続行を決めたゆえ、一縷の望みを勝手に抱いた。内山ロス…寂しい▼正統派の華麗なボクサーだった。世間一般の野蛮なイメージは誤解で、両拳のみを武器とするボクシングは、瞬時の決断を繰り返す知能が勝敗を分ける。〈打たせずに打つ〉理想を具現化。試合後のきれいな顔がその証左だった▼アマ戦歴を紐解くと、エリートではない。花咲徳栄高時代は50戦して13も負けがつく凡な選手。だが、いかなる逆境にも、心は折れなかった。「真面目にやっていれば、チャンスは絶対にある」(著書より)。努力の人だ▼高校の部訓「恐れず・驕らず・侮らず」を座右の銘とする人格者でもある。「ボクサーも一社会人、その自覚がなければ少なくとも世界チャンピオンになる資格はない」。観光バス会社での営業経験が生きる▼薬物、賭博など醜聞が絶えないスポーツ界で、美事な引き際。人生第2幕のリングは「猫カフェ」? KOパンチ級の〝笑劇〟だ。

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