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月光浴

 久しぶりに吉報が届いた。東京都内から福岡・糸島半島の古民家に拠点を移した写真家・石川賢治さんからである▼1990年に初の写真集『月光浴』(小学館)を世に出し、累計10万部を超える大ヒットをかっ飛ばした。文化部時代、この名作を連載企画『写真集の狩人』の1回目に取り上げ、縁ができた▼石川さんは電話で、「11日に『月光浴 青い星』(同)を出版し、27日~6月19日に写真展をキヤノンギャラリーS(東京・港区)で開く」と告げる。出版不況の昨今、「売れない本」と不名誉な代名詞をつけられた写真集を出す決断に、同じ紙媒体の新聞社として筆で応援したくなった▼〈名月や畳の上に松の影〉(其角)。畳の上に黒々と広がる樹影は、月光の明るさと強さを読み手に伝える。84年、石川さんも広告写真の仕事で訪れたハワイ・カウアイ島で、その意想外の光度に瞠目した▼散歩した夜の海岸で、月明かりに海、空、雲、そして飛ぶ鳥の羽先まで見えた。満月の光だけで、地球を活写するきっかけとなった。被写体はヒマラヤの山脈、パラオの海底、足元の花と無限に広がり、見る者を科学文明の光源がなかった古の世界へと誘う▼新刊本は、30年間の満月の旅で撮りためたベストショット約90点を収めた集大成である。〝ムーンライト・ブルー〟。青幻な地球の鼓動が静かに聞こえてくる。

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