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映画「彼らが本気で編むときは、」

 性的少数者(LGBT)は長らく差別されてきたが、公に市民権を得つつある。政府は、新年度の国家公務員の人事管理指針にLGBT配慮規定を盛り込む方針を固め、千葉市も今年から法律婚カップルと同等の休暇制度を取り入れた▼が、世間一般は? アブノーマルな世界を妄想してしまう。女子マラソン選手の夫が離婚会見で、「I was gay」と唐突にカミングアウトした際、目が点になった読者も多かろう▼受け入れるには時間がかかる。この難題に、荻上直子監督が『彼らが本気で編むときは、』(公開中)で取り組んで、新たな家族のカタチを示す。『かもめ食堂』などの秀作を放ってきたが、この監督ひと皮むけた▼男癖の悪い母親が家出してしまう。一人残された小学5年の娘は叔父の家を頼る。待っていたのは女装した叔父の恋人。性転換手術をした元男性だった…▼育児放棄、認知症、性同一性障害と深刻な現代病を扱いながらも、シリアスとユーモアの均衡よく悲壮にならない。包容力のある演出の妙味だ。ザ・家庭料理の空揚げ、エビの炒め物など叔父宅の食卓は日々豊かで、同性カップルと姪っ子の疑似家族もありか、と納得させる▼現代のような性観念の過渡期にあって、〝常態〟とは何なのか。未婚率の上昇でかつての家族像は形骸化。LGBTは〝変態〟と冷視する対象ではなくなっている。

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