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映画「家族の肖像」

 ルキーノ・ヴィスコンティ(1906~76年)-。イタリア出身の映画監督を、映画評論家・双葉十三郎(1910~2009年)が絶賛していた▼『山猫』(1963年)については「すごい重量感のマッシヴ(どっしりした)な演出には圧倒される」(『ぼくの採点表Ⅱ』より)。世代的に、巨匠の隆盛期のフィルムを劇場観賞できなかった▼だが、デジタル技術で名作が蘇る。来月11日公開の『家族の肖像』(74年)は、老教授のローマの豪邸に、赤の他人の迷惑千万一家(母子とその恋人の計4人)が闖入。平穏な生活が乱されていく▼昔の松竹は、監督の条件に脚本執筆を課したという。完全な無から有を生み出すゆえ、映画は監督のものとなる。本作もこの系譜上にある。スタジオの豪邸セット内で完結する人間ドラマは、自らの脚本を演出し、一分の隙もない▼疑似家族が暮らす豪邸を世界に見立て、両極の価値観をせめぎ合わせる。老教授と母子の若い恋人が死と生を象徴し、自由主義と保護主義、性のノーマルとアブノーマルまで持ち出し、世界のカオスを表現する▼英国のEU単一市場離脱、米国のトランプ大統領就任など、新旧価値観が衝突する現実世界に通じる。映画では双方が崩壊し、孤独だけが残る。まさしくデカダンス(退廃)美。今日の世界潮流の本質を洞察する批評能力は、予言さえ秘めている。

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