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映画「海賊とよばれた男」

 「映画を好む人には、弱虫が多い」。こんなことを昭和期の小説家、太宰治(1909~48年)が『弱者の糧』と題して随筆集に収めている▼なるほど小市民が、映画に鼓舞されることは多々ある。邦画『海賊とよばれた男』(10日公開)は、草食系と揶揄される日本男児に、ぜひ見てもらいたい佳作だ▼出光興産を起こした立志伝中の人、出光佐三(1885~1981年)がモデル。戦前・後の動乱期、石油産業を営む九州男児が欧米の石油メジャーに盾突き、自社を拡大成長させていく▼スクリーンから強烈な父性があふれ出る。主燃料の石炭から石油への転換期、石油販売をめぐって既存勢力の奸計に妨げられる。その度に主人公は奇想天外の策を弄し、社員と会社を守る。資源の乏しい日本のいち企業人が欧米列強に伍して戦う勇姿に、ナショナリズムが喚起される▼リーダーの条件には先見性、行動力、統率力などさまざま挙げられる。これらを満たす企業トップは現代にも少なからずいるが、一つ大きく欠落している素養がある。愛情だ▼出光は終戦直後の大不況にも、社員を一人も解雇しなかったという。よく考えれば、固定費の人件費を削って業績をV字回復させるのはそう難しくない。社長室の壁の額には墨痕淋漓たる「士魂商才」。その美学を貫く経営手腕にほれぼれし、劇場を出た弱虫君は敢然と胸を張る。

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