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映画「古都」

 今年のノーベル文学賞には肩すかしを食らった文学ファンも多かろう。事前予想で最右翼だった村上春樹さんが受賞するかと思いきや、米国の歌手、ボブ・ディランさんに決まった▼まあ過ぎたことは仕方がない、と頭を切り替えていたら、日本人初のノーベル賞作家、川端康成(1899~1972年)の名を映画試写状に見つけ、松竹本社(東京・東銀座)へと急いだ▼邦画『古都』(12月3日公開)は、小説のその後を描く。生き別れとなった一卵性双生児の姉妹(松雪泰子さん/二役)とその娘の人生が、錦絵のような京都を舞台に交錯していく▼映画は通巻して、川端が愛した京都の自然や伝統美を守り、引き継ぐ多難を訴える。開巻シーンにしてすでに暗喩する。カメラがべんがら格子、むしこ窓の古い京風町屋に寄ったあと、周囲の近代ビル群を引いて写す。押し寄せる都市開発の波に千年の古都は…▼成田市出身の斉藤勇貴監督は高校卒業後に8年間、映画の本場、米ハリウッドで学んだ。いわば逆輸入ディレクターから見る古都は、外国人が好みそうな日本舞踊、茶、書道に象徴される▼京の川のほとりに、西陣織の着物に美身を包んだ松雪さんがたたずむ。凜とした後ろ姿の京女が、嫋々たる伝統の糸を後世につなぐ。「伝統とは、自信の歴史であり、日々の自恃の堆積である」(太宰治『もの思う葦』より)。

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