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芥川賞

 「果報は寝て待て」という諺があるが、この場合、当事者は泰然自若としていられまい。文学界の最高峰、芥川賞と直木賞の発表日のことである▼候補の新人、中堅作家が編集者らとお決まりの店で、受賞を知らせる電話を今か今かと待ちわびる。作家としての今後の命運を決する瞬間。ドキドキの搏動が伝わってくるテレビ特番を、いち愛読者として幾度か見てきた▼第158回芥川賞を受賞した木更津市の若竹千佐子さん(63)の心境は、どうだったのだろう。デビュー受賞作『おらおらでひとりいぐも』(文芸冬号)の主人公桃子さん(74)の意気軒高を重ねれば、「おらの今は、こわいものなし」か▼若竹さんは昨年、史上最年長で第54回文芸賞を受賞。専業主婦が小説家として広く世間に認知された。作品は東京五輪の年に上京し、2児を産み育て、夫に先立たれた妻の「おひとり様」の老境を肯定的に描く▼国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2040年に全世帯の約4割が1人暮らしになるそうだ。2度目の東京五輪を経た20年後の国に孤独が蔓延する。こうした予想を踏まえ、若竹文学は今後ますますの共感を得るだろう▼「青春小説」の対極にある「玄冬小説」と呼ばれる。人間、年をとっても悪いことばかりではない。〝還暦〟を過ぎてなお、芥川賞の果報が届く〝新人〟の閨秀作家もいるのだから…。

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